急増「生活保護」緊急座談会(上)失業、貧困...社会全体の課題

生活保護を受けている人が205万495人(7月末の速報値)となり、これまで最も受給者が多かった1951年度の204万6646人(月平均)を超え、過去最多となった。2008年のリーマン・ショック後、働くことが可能な年齢層の受給が急増。加えて65歳以上の高齢者世帯の受給も63万世帯と、この10年で2倍近くに増えたためだ。今年度の生活保護給付費は3・4兆円に上る見通しで、国や自治体の負担も重い。生活保護に詳しい識者3人に、制度の課題、見直しへの提言を語ってもらった。(聞き手は東京社会部次長・岡部匡志)

岡部 卓(おかべ・たく)氏
 首都大学東京都市教養学部教授。専門は社会福祉学。貧困・低所得問題とその対応策を研究。編著に「貧困問題とソーシャルワーク」など。57歳。
道中 隆(みちなか・りゅう)氏
 関西国際大教育学部教授。大阪府でケースワーカーなど経験。専門は社会保障論。著書に「生活保護と日本型ワーキングプア」など。62歳。
阿部 彩(あべ・あや)氏
 国立社会保障・人口問題研究所社会保障応用分析研究部長。専門は貧困・社会的排除、公的扶助論。著書に「子どもの貧困」。47歳。

――生活保護受給者が過去最多になった。

岡部: 失業率と生活困窮者の実態を考えると、むしろよくこの数字で踏みとどまっている。今後も増加傾向だろう。これまでは家族と企業が社会保障の代替・補完として家計を支えてきたが、両方の財布が軽くなり、生活困窮者は生活保護しか頼れない。

道中: 今までは「探せば仕事は必ず見つかる。働けば食っていける」という神話があり、20歳代から50歳代の稼働年齢層は生活保護に入ってこないと想定されていた。ところが非正規の労働者の増大などで、働いても食べていけない層が増えた。また医療、雇用、介護、年金など他の社会保障のほころびを生活保護が支えているのが実態で、受給者増に拍車をかけている。

阿部: 人口に占める受給者の割合をみると、急激に増大した今でも他の先進諸国の数分の1程度だ。現状は、社会として背負わなければならないコストと考えるべきだ。一番増えているのは高齢層で、高齢化が進む以上、今後、経済が好転しても人数は増える。

――受給者は高齢者の割合が大きい。さらに働き盛りの世代を含む「その他世帯」が職を得られない。

岡部: 働き盛りの40歳代が失業によって受給者になる例が非常に増えている。失業の場合、第1の安全網になる雇用保険は期間限定だし、求職者支援制度や住宅手当などの第2の安全網も十分機能していない。雇用創出政策も国として積極的に打ち出せずにいる。最低賃金での収入が生活保護を下回る県がまだある。これでは就労する意欲がそがれるのも無理はない。


道中: 自治体のケースワーカーは就労支援に力を入れてきたが個人の資質や熱意に左右されるレベルで、組織として対応するようになっていない。福祉事務所の体制そのものを見直さないと効果が上がらない。

阿部: 普通の人でも正規雇用で働くのは大変な時代。生活保護受給者は心理面や家族に問題を抱えているケースが多く、いきなり「企業戦士のように働いて」と求めても厳しい。もう少し柔軟な働き方を選べるようにならないと、いったん就労してもまた失職する、が繰り返されてしまう。

岡部: 病気や障害のある受給者の場合、「半福祉半就労」といった中間的就労も選択肢にするべきだ。賃金が伴わないボランティアなどの社会参加を広い意味での就労ととらえて、評価する仕組みがほしい。

引用:(2011年11月17日 読売新聞)

豊中市障がい者市民の会

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