生活保護支給水準引き下げ検討 県内受給者広がる戸惑い

タレントの母親の生活保護受給をめぐりおわび会見したことをきっかけに、小宮山洋子厚生労働相が生活保護費の支給水準引き下げを検討する考えを示したことに、県内で現実に生活保護を受けている人たちに波紋が広がっている。不正受給を背景として、親族の扶養義務を徹底させる法改正を目指す動きもある。県内でも年間150件余の不正受給がある。だが、適正な手続きで受給した人にとっては、支給水準切り下げは生活に直結する問題になっている。

 「生活保護だけが頼り」。2月に仕事中に脳出血で倒れ、南信地方の病院に入院している男性(65)は最近、生活保護が認められた。倒れた時の所持金約100万円は最初に入院した別の病院での支払いで大半を出費。国民年金や厚生年金の保険料を納めた期間が十数年しかなく、年金は受け取れない。

 4人兄弟の三男で両親は既に他界。2番目の兄を昨年亡くし、他の2人も重い病気や障害があって頼れない。生活保護の支給額はまだ決まっていないが、病院の医療ソーシャルワーカーによると、退院後は生活費として月6万5千円余、身体障害者手帳を取得すれば、月約2万3千円が加算される見込みという。

 しかし、小宮山厚労相は支給水準の見直しの検討や、親族が扶養を困難な場合には理由を証明する義務を課すことを検討すると表明。自民党も給付水準の10%引き下げを求めている。男性は「生活保護で暮らすしかない人の気持ちを無視している」と憤る。

 県内の生活保護受給者はことし3月末時点で8567世帯、1万1291人で、前年同期より294世帯、344人増えた。一方、2010年度の不正受給は155件(いずれも県地域福祉課)。中信地方の医療ソーシャルワーカーによると、最近は生活保護受給者への風当たりが強まり、申請をためらう人もいる。

 生活保護は、病気や障害以外の理由で経済的に自立できなくなった人にとってもセーフティーネット(安全網)になっている。南信地方の市に住み、昨年から生活保護を受給しながら農業を始めた男性(59)は「働けても働かない人と、必死にはい上がろうとしている人とを分けて考えてほしい」と訴える。

 男性はかつて建築業を営み、年収は1千万円を超えたという。しかし、2005年のマンション耐震強度偽装事件の後、強度計算の審査が厳しくなると仕事が激減。その後のリーマン・ショック以降の不況が追い打ちとなり、金融機関への融資返済ができなくなって自己破産した。

 農業収入は生活保護の支給分から差し引かれるため、実際に支給される生活保護費は年間100万円に満たない。新たな農機具も必要で、食事は栽培している米や野菜を除くと、安い卵や缶詰ばかりだ。男性は「規模を拡大し、いずれ生活保護を受けずに済むようにしたい」と話す。

 一方、生活保護受給決定の前に親族の扶養義務を徹底させようとする動きも、複雑な家庭環境に置かれた人にとっては受給申請の壁になりかねない。南信地方の病院に入院している男性の場合、20年以上前に妻と離婚後、連絡を取っていない長男に対し、福祉事務所が扶養の可否を調べた。「迷惑をかけるわけにいかないから生活保護を申請したのに...」と表情を曇らせる。

引用:信濃毎日新聞06月08日(金)


豊中市障がい者市民の会

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